返ってきたメモ用紙を見て、次の紙にまた文字を綴る。

僕は、最初メモ用紙に、「誰かに脅されている?」と記し、彼女に渡した。

すると、「はい。つい先日知らない人から電話がかかってきて、私のお父さんのことは誰にも話すな、と脅されました」と返事。

僕はそれを見て、「脅した人物(以後xとする)の性別や年齢はわかる?もしくは、心当たりは?」ともう一枚メモ用紙を出して彼女に渡した。

「人数でだそうなんて思ってねぇよ。この人数分だけ瑠璃の想いが大きいって表してんだよ。母親だけでも出せよ」

いくら盗聴されているかもしれないとはいえ、話の内容が段々ヤバい方向に向かっているような気がする。

琥珀が見た限り、隠しカメラは無いようだし、僕も無いように見えたし、窓から覗かれているような気配も感じない。

だから、もし何かあるとしたら、残るは盗聴。

高田さんの様子に異変があったのは、お父さん、という単語が出てきてからだった。

つまり、高田さんが脅されているのはお父さんに関係していること、とおおよその予想がつけられる。

そして脅されるような内容で強い説は、やはりクローン関係だろう。

他に何か脅す内容があったときはもう仕方がないから、ここはもう一か八かだったんだ。

クローン関係だと予想したのなら、それに無関係なふりをすればいい。

という訳で琥珀が作ったストーリーがあんな感じになったのだろう。

でもあの感じじゃ、僕が勝手に一目惚れして、人を一杯引き連れて、武力でお父さんを引き摺りだそうとしているヤバい奴にしか見えないような気がするのだが。

天藍ちゃんもようやく気づいたようで、魔女のようにニヤリと笑った。

「そうよ。私は来たくなかったのに、瑠璃さんがどうしてもっていうから来たのよ。ここで話がつかないと私の時間どうしてくれるのよって話」

おいおいおい。

天藍ちゃんの方を呆れたように見ると、彼女は赤い舌先をぺろっと出して悪戯っぽく微笑んだ。

今までに見てきた天藍ちゃんの笑顔で、一番幼く感じた。

そうこうしていると、高田さんから返事が返ってきた。

「変声期で声を変えていたみたいで、性別も年齢も見当がつかない。心当たりもありません」