「それは、どんな鉱石だ?」

「ある特定の状況下でしかできない鉱石で、殆ど知られてない。幻の鉱石と言われてるわ。色は基本的には透明。だけど、当たる光の種類と量によって色が変化するの。紫外線なら暖色系統だって聞いたわ。何の光かは忘れたけれど、ある特定の光に当たると虹色に輝くらしいわよ」

この話を聞く限り、見た目はダイヤモンドみたいなものなのだろう。

「だけど、そんな摩訶不思議な現象が起きるのはごく稀。掘り出されても、加工技術が間に合わなければただの白く霞んだ石。だから、全くという程知られてない」

天藍ちゃんの説明も専門家レベルに緻密で分かりやすい。

この空間に二人も宝石に詳しい人がいると、彼らが博識なのではなく、僕が無知なのかと錯覚してしまう。

「……そして、テーナは8月3日の誕生石」

「8月3日、か」

それなら、予想されるパスワードは0919081705250803 となる。

「早速ですけど、入れましょうよ」

天藍ちゃんがいつもの調子でキーボードに手をかけると、獲物を獲るライオンの如く、彼女の細い手首が掴まれた。

「よせ。間違っていたときに取り返しがつかない。せめて、その日が誕生日であるクローンを見つけてからにすべきだ」

珍しく、琥珀の焦りが浮き彫りになっている。

そして、それが原因からなのか、明らかに力加減ができていないようで、琥珀の手の甲が筋張り、天藍ちゃんが顔を顰めた。

「琥珀、力、力加減」

琥珀ははっとしたように指を解く。

「……すまない」

「ううん、こっちこそごめんなさい。早とちりしすぎたわね。先に言えば良かったのだけれど……私、この誕生日の同級生、知ってるの」

「えっ……それ、誰……?」

2つ目の衝撃が琥珀と僕の周りを走り抜いた。

今日だけでの調査の進捗具合が以前とは比にならず、うまく行き過ぎてむしろ間違いの方に誘導されているのではないかとさえ疑ってしまう。

「それは、」












 
「タカタレイカ」