高校生の内容に関しては、学校に行っていないことが影響し、レベルゼロだ。
心配がやがて憂鬱へと変化し、それを吐き出すかのように重いため息が出てしまいそうになった。
それに、もうすぐ退院だから、学校に行けと、母に言われるに違いない。
知成さんが目の前で熱心に指導してくれているのにもかかわらず、どう言い訳して学校を休むか模索中である。
「天藍ちゃんっ!!」
「わっ!」
カトン、と手から落ちたシャーペンが床で跳ねた。
耳の中にキーンと高く、不快な音が充満し、堪らず手の平で押さえた。
知成さんが慌てて身振り手振り何かを伝えようとしているので、ゆっくりと手を耳から離す。
「ご、ごめん、天藍ちゃん、そんなに驚くなんて思わなくて……大丈夫?」
教えて貰っているのに、他のことに心を持っていかれていたのは私だ。
知成さんが謝るなんてこと無いのに、あんなに申し訳なさそうに眉を下げられると、もっと自分に自信を持とうよ、と何故か私が苛ついてしまう。
「いや、私こそすみません、ぼーっとしていて」
少しぶっきらぼうな言い方をしてしまったかもしれないが、訂正はしなかった。
「そっか、それなら良かったよ」
何を返せば良いのか分からなくなり、拾ったシャーペンを握ったまま小さく頷いた。
「心配したよー。天藍ちゃん、話しかけても返事してくれないから、どこか悪いんじゃないかって……」
伏せ目がちにそんなことを言うものだから、長い睫毛が瞳を影で覆い、暗さのある優しさに、心臓が溶かされていくような感覚を覚えた。
とくん、とくん、とゆっくりと、今まさに溶けている最中のような。
溶けている熱が顔にまで上ってきているのを悟られたくなくて、そっぽを向いて言った。
「病人だからっていつもどこか悪い訳じゃ無いんですよ」
分かっていながら同じ過ちを繰り返す自分に失意と諦めを感じつつ、怒ってしまうか、と知成さんを横目で見た。
……え。
知成さんはクスクス笑っていた。
それも、すごく楽しそうに。



