俺の黄金の血は、作られたもの。
俺の容姿は、作られたもの。
俺の性格は、作られたもの。
俺の体は、作られたもの。
俺の全ては……人為的に作られたもの。
琥珀の気持ちは、痛いほどによくわかった。
お前を見るたびに奥深くに閉じ込めておいた怪物が唸り声をあげる。
何とか暴走させないようにした結果、あんな冷たい態度を取ることしかできなかった。
瑠璃が無理をして背伸びをしていたのも知っていた。
だが、親を知らない俺は、どうすればいいかわからなかった。
普通の親がどうしているのか、どういう接し方をしているのか、俺はわからない。
だから、琥珀と同じ態度を変えないようにすることにした。
差をつけてはいけないのだろう、という安直な考えによる結論だ。
琥珀も瑠璃も、凄い子だ。
俺は自分の体の奥底まで知られているという不快感、周りとの大きな相違、それから来る差別的な視線。
それに耐え切れず、俺は俺を作った研究の代表者を見つけて殺した。
刺殺だった。
包丁を抜くと傷口から血が吹き出してきて、そいつがバタンと倒れた。
生臭い血が体に纏わりつく。
包丁と手から滴る。
命を弄んだ奴の命を奪った感想は何もない。
怒りも、後悔も、罪悪感も、はたまた快感も無い、無味乾燥な荒野を歩いているような。
暫くして人も来たが俺は捕まらなかった。
捕まらなかった、というか、捕まえられなかった、という感じか。
俺は重要な研究素材だったからな。
捕まる代わりに、得体の知れない薬を打たれ、俺は数年間病床に伏せ、散々検査、実験されたようだ。
ようだ、というのは俺はその間意識を末梢させられていたからだ。
だから、何をされていたかは知らないし、これから一生わかることもない。
ソイツらは俺が起きると、殺されるとでも思ったのか、そそくさ逃げていった。
俺一人が酸素を吸うこの空間で、様々な資料を目の当たりにしたが、殆ど医学知識のなかった俺は一つも理解できなかった。
今思い起こせば、クロロホルムやら成長遅延剤やら、ヒ素やら危なげな単語が並んでいたように思う。
そんな罪と闇に蝕まれた、腐った俺を支えてくれたのが、恋藍。
そして、櫻子だった。
琥珀にもいつか、そんな人が見つかれば少しは救われるだろう、と思っていたが、それはもう大丈夫なようだな。
思いっ切り嗤ってくれたらいい。
罵れ。
嘲れ。
蔑め。
俺は人間じゃない。
命に与えられた厳しいオプションに潰されて少年時代で、既にキラーとなり。
愛する妻を無理に笑わせ、守れずに、死なせ、余計な心配をかけて。
挙げ句の果に、遺された子どもたちにすら苦しい思いをさせている。
俺みたいな愚図、地球上に一人しかいないだろう。
俺はもう疲れた。
もう、何の役にも立てない。
都合のいいことに、俺の子供達が、潰れずに真実に向かって手を伸ばしてくれている。
それでいい。
昏くても、闇を掻き分ければ光は見つかる。
だから、頼んだぞ。
俺は、俺の役目を果たしたよな?
なあ、恋藍。
俺はこれでいいよな。
そう言ってくれ。
俺は、これで今までの罪の責任をとる。
今まで本当に申し訳なかった。
そして、ありがとう。
じゃあな。
俺の尊い家族へ。
ずっと、愛してる。



