お前らの言うとおり、俺、恋藍、櫻子は幼馴染だった。
恋藍は自分が病気で様々な顔を持つ医療界を見てきたから、櫻子は後に旦那となる男に影響されて医師を目指すことにしたという。
俺が目指した理由は、追々話そう。
恋藍と俺は内科医、櫻子は外科医志望で、大学卒業後、それぞれ希望通りの部署に配属された。
研修医から晴れて医者になれた頃、学生時代からずっと想っていた恋藍に告白した。
それから入籍に至るまで、そう時間がかからなかなかったのは言うまでもないだろう。
恋藍は、瞳が丸く大きく、包容力のある、茶色がかった髪の愛らしい女性だった。
性格はひたすらに優しく、包み込むような母性を持っていながら時々ドジを踏む。
また、鈍そうに見えて時折こちらがタジタジするまでの鋭さを見せ、隠しておきたいような悩みも、やりきれない悲しみも、全て見抜かれた。
大きな瞳がふわりと細まるとその中で四散していた輝きが凝縮して、眩しいくらいの燦めきが放たれる。
その燦めきに、どれだけ癒やされたことか。
その癖自分の悩みなどは、どれだけ周りに詰め寄られても吐かず、遂には気付かれないように上手く隠すようになってしまった。
夫である俺でさえ、気づけなかった。
恋藍は自身の病気が悪化していることを話さなかったのだ。
寧ろそれを隠すために普段通りを装って、笑顔で仕事に向かっていた。
言い訳がましくなるが、彼女は補助人工心臓を着用していたので、調子の確認は娘を心配する父親のような勢いでしていた。
でも、大丈夫よって、天使のように朗らかに笑うから。
そうか、良かったって安心して、仕事に戻る。
その笑顔を疑わずに、信じ切ってしまったから、彼女の限り限りまで、気づくことができなかった。
彼女は入退院を頻繁に繰り返すようになり、やっと違和感に気づいた俺が怒鳴って白状した。
ごめんね、と泣きながら。
絶望の淵に立たされ、仕事中も上の空になった。
自身の不甲斐なさと、進んでも落とし穴があると分かっていて強制的に絶望へと進まされることに灼ける焦燥を感じた。



