「琥珀……」
感情の赴くままに叫んだせいで、文脈も感情もぐちゃぐちゃだ。
まだまだ罵倒したいところだが、今の目的は親父をこの場に引き止め、真実を吐かせること。
激流のような感情を押し留めた。
「……いいだろう」
親父はこちらに振り返り、部屋へと足を踏み入れる。
俺は思いの外あっさりだったので拍子抜けして、あんなに情熱的になったのが唐突に恥ずかしくなってきて、頬に熱が集まるのがわかった。
「格好良かったわよ。本音言えて良かったわね」
赤い顔を見せたくなくて、視線だけちらりと横に向けると如月が俺からは視線を外し、前を向いて微笑んでいた。
何て綺麗な横顔だろう。
兄妹だと深層心理で意識しているからか、瑠璃の横顔と重なった。
暫く見惚れていると、くるっと顔をこちらに向け、前髪の影がかかった昏く、それでいてとても綺麗な瞳が瞳孔に飛び込んできてドキリとする。
「……もうっ、ジロジロ見ないで。言いたいことあるならちゃんと言いなさいよ」
僅かに頬に紅が差している状態でそんな口を利く様子が堪らなく可愛らしい。
素直じゃねぇな。
こういう不器用なところは、絶対親父からの遺伝だなと確信した。
「さて、学生諸君、君たちはどこまで突き止めた?」
「僕達3人が血縁関係にあること。母親が、恋藍が亡くなったタイミングで天藍ちゃんだけ日本に引き離されたこと。恋藍、櫻子、珊瑚の3人が幼馴染であること。全員医療に携わっていること」
今まで明らかになった事実を羅列していく瑠璃の言葉に、如月が食い気味に付け加える。
「櫻子と、貴方が密会していること」
「……よく調べ上げたな。我が子ながら恐ろしいものだ」
鼻から長く息を吐き出し、疲れ切ったようなくたびれた表情で俺達3人を見回す。
「この茶は、誰か飲んだものか?」
瑠璃が如月が来る前に用意していた麦茶を指差し、そう尋ねた。
それは俺のものだったが一口も飲んでいないし、触ってすらいない。
「俺のだけど、飲んでねぇよ。喉乾いてんならやるよ」
「では、頂こう。これから、長く話すことになるだろうからな」
親父はグラスを傾けると少し多いくらいに麦茶を流し込んだ。
カラリと、氷が溶けて崩れる音がした。



