「あ、あの……流旗さんは勉強が得意なんですかっ」
勉強を教えてくれていて、苦手な訳がないのに緊張して変なことを聞いてしまった。
語尾のあたりも、自分が何を言っているか認識せずに早口になって途切れてしまった。
……だって、何か後味悪かったんだもん。
私が悪いことしたみたいになるの、嫌だから。
ハートが強いんだか弱いんだか。
流旗さんはドアにかけていた長い指を解き、ゆっくりとこちらを向いて、微笑んだ。
その優しさの不意打ちに、不覚にも胸がどきん、と鳴る。
「得意な訳じゃないよ」
そう言いながら、さっき座っていた椅子に座り、肩にかけたリュックを降ろした。
その拍子に、傷んで光を失った金髪が瞳にかかる。
どうして金髪にしたのだろう。
黒髪のほうが似合ってたっていうか、この柔らかい感じが、自ら金髪を選ばない気がした。
「天藍ちゃんは勉強好き?」
「私は特段好きって訳じゃないので……流旗さん、すごいですね」
流旗さんは、私が褒めると、照れたように微笑んで頭を掻いた。
「ありがとう。でも、僕はそんなにすごい人じゃないよ」
ふっ、と瞳に暗い光が走るのを私は見逃さなかった。
……謙遜している?風でもない気がする。
でも、沢山勉強しているんだろうなぁ、ということは分かった。
勉強が好きっていうのも、中々思えないから、きっと私が思ってるもっともっと沢山頑張っているんだ。
「怜悧高校にはね、」
「れっ……!?」
……怜悧高校!?
あの超名門の!?
怜悧高校は、私でも知っているような有名な男子校で、偏差値73以上が最低ラインというような噂を耳にしたことがある。
また、入学できたとしても、その後に周りのレベルに追い付けずに退学令が出されたり、自主退学したり、終いには病んでしまう人もいるそうだ。
これらの情報は全て、クラスの女子達がキャーキャー猿みたいに騒ぎながら話していたのが聞こえてしまったことから得た。
「えっと……?どうかした?」
私が流旗さんの話を切ってしまったことに気づき、内心ではあわあわ焦りながら謝った。
「ご、ごめんなさい……。怜悧高校っていうのにびっくりしちゃって……」



