9月。

降り注ぐ日差しはその手を緩めることなく、容赦無しに照りつける。

夏のむわっとした茹だるような暑さはまだまだ続くようである。

額に滲み出た汗が糊の役目を果たし、前髪がピタリと貼り付いている。

きっと前から見ると、妖怪のような奇々怪々な面をしているのだろうな、と思ったがもうどうしようも無い。

夏祭りの際、調子に乗って少し顔を出しすぎてしまったので、我慢である。

その代わりと言ってはなのだが、気休めに後ろ髪を切ってみた。

みでぃあむ……いや、せみ……せみろんぐ……?

よくわからないがボブよりは長めで、肩辺りまでの長さで切り、ストレートでハーフアップにしている。

しかしこれが登下校中には凶と出て、首後ろがジメジメして仕方がない。

学生にとって一年の間で一番のオアシスと言っても過言ではない夏休みを終え、一時砂漠地帯へと化する、と言っても過言ではない新学期が始まった。

まず立ちはだかるのは、新学期恒例の実力テストである。

麗華に感化され、私も勉強量を増やし、橘兄弟と共に学習をした。

夏休み中は入院していたので、瑠璃さんに来てもらう形になったが、部活が忙しいらしく、ほぼ私と橘くんの二人きりで勉強する形となったのだが。

恐ろしく気まずいのだ。

自然な無言というのならそれでいいのだが、私が意識し過ぎているのか、沈黙が作り物のように思えてしまう。

そのため、必死に話題を振り絞り話し掛けてみるもキャッチボールの途切れ方が異常なのである。

きっと橘くんは何も気づいていないでしょうに、私だけ慌てたりして馬鹿みたいだ。

それに、もうほぼ治っているのにやたら頬の傷跡を気に掛けてくるし。

まあ確かに少しは残るかもしれないかもしれない。

強いていえば、もう一つ思い当たる節があるのだが、というか、ほぼこれが原因なのだろうという出来事がひとつ。

花火大会の後、あの騒擾があったことにより時刻は午後9時を過ぎていた。

うちの病院の消灯時間はゆうに越している。

病院に帰れないことはないが、この格好、そして血飛沫、この年齢、この私が見つかれば雷が落ちるのは間違いがない。

かといって二階から侵入できるかと言われると、それは無理がある。

という訳で、橘くんの家に泊ったのだ。

私はとんでもない不良少女になったようだ。

嫌な気はしなかった。

家に着くと、幸運なことにお父様はおらず、いつも勉強していた畳の部屋で瑠璃さんのみが寝間着姿でバラエティ番組をケタケタ笑いながら見ていた。

瑠璃さんは私達を見ると驚いた顔をし、すぐさま納得したようにニヤニヤと口角をだらしなく歪ませた。

「ふぅん、そーゆーこと」