……お前、俺の気持ちなんて想像したことあんのかよ!?
リアルに耳に届いた、苦しげな叫びにはっと息を呑む。
同じ過ちは繰り返してはいけない。
人には人の事情があって、私だけが不幸で辛く、苦しい思いをしているわけではない、橘くんの一件で学んだではないか。
私の知らないところで、影に隠すように生死を彷徨うような苦しみを味わっているのかもしれない。
人間は、狡く愚かな生き物である。
だからこそ、100%幸福で生きてきた人間など、いないのだ。
その数十%の不幸が人の人生を全て狂わすこともできるはずだ。
「ごめんなさない。私の気持ちばっかり押し付けて。悪かったわ。貴女には、貴女の事情があるものね。ただ、人を傷つけるような真似はもう止めて欲しいわ」
少々冷酷な気もするが、そう言い放ち、橘くんを探すためにその場を離れようとした。
「うっ……!」
頭に流れる血液が堰き止められたかのような痛み。
体を通らない空気、酸素。
首にチクリと痛みがした。
長く節のある生温かい棒が私の首に力一杯巻き付いている。
私が足や手をバタつかせる度に、それは強くなり、意識も朦朧としてきた。
生理的な涙が流れ、頬の傷に沁みた。
無言で首を締められているので、彼女が何に対して怒ったのかわからない。
どうして?とは疑問に思うがそれがわからないところが駄目なのだろう。
死にたくない、でも……これは。
死ぬ運命なのか。
疲れてきて、ふっ、と体中の力を抜いた。
橘くんの顔が、ずっと浮かんでいた。



