「……え?」
困惑している私に、何を感じたのか全く的外れなことを話し出した。
「ん?あ、そっか、遥斗との接点はねぇ、遥斗と君のお母さんに僕の身内がお世話になってて」
違う、聞きたいのはそんなことじゃない。
「あ、違うみたいだね。えっと……僕は、声変わりしてないから幼く見られがちだけど高校3年生で」
違う、そんなことでもない。
……私より年上だったことには驚きだけど。
「あの……勉強を教えるって、どういう意味ですか」
流旗さんは細められていた目を見開き、瞬かせた。
「え……そのままの意味だよ」
その驚きの眼差しは純真な善意でいっぱいで、言い換えるとやっぱり鈍くって。
「わ、私……本当に勉強できないので、いいです。きっと時間の無駄です」
「そんなの気にしなくてもいいよ〜!僕には時間、沢山あるから」
「でも流旗さん、受験生だし、」
「僕は大丈夫だよ〜!勉強ってさ、将来に繋がるものだし、家庭教師とか雇ったらそれなりの値段、しちゃうじゃん?」
将来、という言葉にどっくんと大きく心臓が跳ねた。
「そうだよ、天藍ちゃん!教えて貰っときなよ!」
「ほら、天藍姉!」
急かされたって私の返事はNOのまま、変わらない、変えられない。
本当にただの時間の無駄になる未来が見え見えだし、ましてや殆ど繋がりの無い流旗さんに時間を捨てさせるなんて論外だ。
「お気持ちありがとうございます、ですが」
「じゃ、早速始めよっか〜!」
……はい!?
「じゃ、俺たち邪魔だし、帰るから」
「頑張ってね〜!」
「ちょっ……ちょっと待っ……!」
最初から企んでいたのではないかと疑うほどサックリ帰って行った。
流旗さんは鼻歌なんて歌いながら、なにやらリュックをゴソゴソ探っている。
……ここまで来て、断るほど私も頑固では無い。
仕方がない。
退院するからとか言って、早めに切り上げてもらおう、流旗さんのためにも。
そう決心し、流旗さんに聞かれないよう、小さくため息をついた。



