優しさに沈んで、溢れて止められない想いを表面に出さないことに必死で、それで結局冷たくしてしまって。
もう、解放したいくらい一杯一杯で、でもそれはできない。
胸中の葛藤が、想いを強める。
近くにいれるようになればなる程、もっと近づきたいという欲望が塞いだ穴から滲み出るのだ。
だから、少しずつ、離れなければならないのだろう。
彼を傷つけぬために。
ビュオオオと木の葉をもぎ取るかのように強い風が空間を駆け抜けた。
「な、何であんたがここに……!」
びくっ。
金属音のような、高く鋭い声に全身が痙攣する。
それはコッチのセリフよ、などと言う余裕もない位、動揺が波紋状に広がっていくようで、脳がじんじんと揺さぶられた。
背後でテンポの速い呼吸音がする。
両頬を手のひらで包んだ。
大丈夫よ、何故動揺してるの。
あの子はきっと、弱いだけ。
だから、何も恐れることは無い。
「あら、奇遇ね。高田さん」
私は座ったまま、顔だけ彼女の方へ向けて余裕たっぷりを装った。
私はWhiteQueen。
このくらいで動じるものですか、と唱えて。
「ああ、もう、とんだ誕生日ね。問の答えになってないわよ。何で、あんたなんかがここにいるのよ。顔まで出しちゃっておしゃれして、調子乗ってんの?ちょっと位顔がいいからって勘違いしない方がいいわよ」
「それはコッチのセリフだわ」
……言えた。
「何あんた、ちょっと性格変わったね。前より素を出してる感じ。ピンポイントで人の神経逆撫でしてくるのね」
彼女は怒りを取り繕うように腕を組んだが何かを我慢するように震える声は隠せていなかった。
「ありがと。私もそう思うわ。以前よりあなたと張り合えるようになったもの。いや、貴女、下手になった?前は怖かったわよ?今よりは、ね」
「あーもう!!ホントムカつくわね!!」
「う……っ!」
背中が硬いものに打ち付けられ、腹の底から呻き声が漏れる。
胸ぐらは赤いネイルの施された綺麗な指に掴まれていた。



