交錯白黒


「……!?」

歩み寄ってくる人物を認識したとき、驚いて力なく倒れていた体が跳ね上がった。

「……よぉ」

「橘くん……!?何で、どうして……?」

私は取り乱すのに、橘くんの透き通るような白い肌は動かない。

「お前、花火大会行きたいんだな?」

いきなり核心を突かれて固まる。

きっと、遥斗が告げ口なりなんなりしたのだろう。

「いや、別に……」

橘くんから顔を背けた。

「素直になれ。自分を騙すんじゃねぇ」

長くしなやかな指で顎を掴まれ、そのまま無理やり視線を合わさせられた。

真摯なその眼差しが鋭すぎて、純真すぎて、飲み込まれそうでその手を払った。

「簡単に言わないで。大体、そんなこと聞いてどうするつもり?行きたくたって、行けないのに。嫌がらせのつもりかしら」

語尾が揺れ、咳払いをして不自然に誤魔化した。

「行きたいんだな」

「だから……!」

何も知らない癖に、とイラつき、彼の顔を振り向いて言葉を止める。

少し曲がった唇の隙間から、低い声が流れ出た。

「連れてってやるよ」

悪役のような邪悪な笑みにドキっとしていると、ぐっ、と右腕を掴まれた。

「行くぞ」

低い声と共に息が鼻先にかかる。

電灯よりも強く真っすぐで、綺麗な光が瞳から放たれ、鼓動を速められる。

「きゃっ……」

ベッドから立たされ、肩と膝を抱かれ、持ち上げられた。

世間一般で言う、お姫様抱っこというやつだ。

温かい。

「待って!」

橘くんが踏み出そうとした足を戻したのが振動でわかった。

「何」

見下ろす橘くんのサラサラの黒髪が頬に影をつくる。

釣り上がり、切れ長の瞳から至近距離で見つめられ、少し赤くなって視線をそらした。 

「いや……あの、その……やっぱいいです」

「何だよ、言えよ」

不機嫌そうな声が、むしろ優しく聞こえた。

「……怒んない?」

「じゃあ、約束してやるよ。言え」

「……い」

全身が熱を持ち始めてうまく力が入らない。

「聞こえない」

「だからっ、浴衣が着たいのっ!」