私は毎年のように、早々に布団に埋もれておいた。
この日と、クリスマスは外が騒がしく、嫌味なほどに明るいから。
――また会って話そうな。一緒に頑張ろうぜ。
濡れた瞳で真っ直ぐに私を捉え、優しく笑ったあの男の子。
写真の、男の子。
それを見て、彼のことを思い出した。
あの子と会ったときも、花火大会の夜だった。
初めて外で見れる、と舞い上がった自分が馬鹿だった。
病院からやっとの思いで脱走したが、子供の足や思考回路を読み解くなど大人にとってはお遊びのようなものだ。
すぐに見つかり、連れて行かれた。
車に乗せられた瞬間、夜空に花が咲いた。
また、窓越しでしか、光の華を見届けることができなかったのだ。
そのショックが大きくて、何を話したかは覚えていない。
でも……悩みを話したのだろう、ということはぼんやり、覚えている。
同じ位の年齢の子が、同じ位の深い悩みを抱えてるんだって、そういう安心と感動が強く記憶に刻み込まれているからだ。
そして、あの男の子はきっと――橘くんだ。
あの特徴的な黒髪、つり上がった瞳は、間違えようがない。
彼は……私のことを覚えているようだが、私は忘れたふりをしている。
あのときの私は、今の私と違う。
何も知らない清廉な女の子は、汚れて冷たい女王になっているから。
だから、確信を持たなくていい。
彼はきっと、まだ確信はしてない筈だ。
……彼は、一人で花火を見たのだろうか。
窓枠から見る花火は小さく、でも綺麗だった。
綺麗だと、思った。



