「いつまで息止めてるつもり?」
指摘されてから、心臓の鼓動に負けていた苦しさが表に出てきた。
「っぷは、」
一気に酸素が流れ込み、ここまで息を止められていた自分が信じられない。
金髪の彼は、クスクス、と目を細めて静かに笑う様子が上品で、穏やかな印象を受けた。
その人の顔で視界が埋められているため、千稲ちゃんと遥斗の様子が不明だが、大きな笑い声が聞こえる。
「……っ」
羞恥で顔が急激に火照り、ピクピクと頬が痙攣した。
「……どなたですか」
いきなり人に顔を接近させるのはどうかと思いますけど、という言葉が喉を突いて出ようとするのを抑え込む。
その人はゆっくりと私から離れた。
ボーダーのシャツに黒いカーディガン、スラリとした足が際立つジーパンを履き、大きなリュックを背負っている。
その人はカクッと首を傾げて微笑み、合わせて金髪が不自然に揺れた。
長い睫毛が瞳に被さり、唇が緩く優しく曲がる様子は、この世のものとは思えない程神聖な、清らかさを感じた。
……天使みたい。
見た事も無い筈なのに、そんなことを思う。
後光が射して来てもおかしくないであろうその雰囲気に、しばし見惚れていた。
……この人、教科書を回収しに来た人だ。
でも、それ以前にどこかで見た記憶がある。
それも、沢山――。
「あれ?覚えてないかなぁ」
不思議そうに尋ねた彼に、慌てて答えた。
「紙袋取りに来られた方ですよね」
「あれ?あ、そっか。天藍ちゃんとは初めましてか〜」
顎に手を添え、考えて込んでいた彼はふんわりと笑った。
どくん、と心臓が跳ねるのを自覚した。
……か、可愛い……じゃなくて。
何で、私の名前を知っているの?
「えー?遥斗から聞いてないの?」
え……。
どうやら遥斗の知り合いらしい。
「何も聞いてないんですが」
金髪の彼に返事をしつつ、遥斗を横目で見る。
「話すタイミング無かったし」
遥斗も横目で私を見たが、声に呆れた響きを含めた私に対し、はるくんは声からも感じ取れる余裕の笑みを滲ませていた。
……この感じ、絶対わざとだな。



