迫りくる吐き気に耐えながら、二人を微笑ましく眺めている風を装った。
コンコン
……また?
今日はやけに来客が多いな、と若干苛つきつつ、声を出した。
「どなたですか」
「あれ?遥斗、そこにいないの?」
私の質問はどこへいったのやらだが、どうやら遥斗を探しているようだ、ということはわかった。
「いるよー、るり兄でしょ、入りなよ」
……ここ、私の病室……。
そして、"るり兄"とは?
言い返す気力も失せ、ため息をついて窓のほうへ視線を移した。
木々はまだ淡いピンク色に染められていた。
私には触れられない温かさが、窓の外にある。
色づいた世界が、この透明な薄い板の向こう側にある。
優しい、平和な、穏やかな、温かな――。
そう、信じたい。
だが、冷たく無機質な白は、いつも裏側に張り付いている。
窓ガラスに映し出された己の姿には、覇気が無かった。
「……え、らねえ、天藍姉っ!」
鼓膜に細かい震動が伝わり、体がびくん、と反応する。
「え……遥斗?」
「天藍姉、大丈夫か?さっきからずっといたろ」
怪訝な表情で睨まれ、体を縮こませる。
そんな不快な表情を隠そうともしないはるくんに対し、千稲ちゃんは満面の笑みではしゃいでいた。
「天藍ちゃん、大助っ人だよ!」
……え?
千稲ちゃんの言っている意味が分からず、硬直。
すると、目の前が見覚えのある顔でいっぱいになった。
「き、……っ!」
咄嗟に悲鳴を飲み込み、思わず息を止めた。
心臓はどきどき、と規則的な振動を起こし、顔に、間接的に熱が伝わる。
傷んでしまい、輝きを失った金髪、それに合わない真っ黒で艶のある瞳。
高く小ぶりな鼻、ぽってりとしていて、程よく赤みを帯びている唇。
心臓の鼓動と、その人から感じる熱が籠もり、視界が鈍ってきた。
……この人、どこかで――。
その人は何かを見透かしたようにクスリ、と悪戯っぽく笑った。



