「橘くんと同じで、自分の体が証拠になるのが嫌だからです」  

「そんなことしないよ」

「保証はできないですよね?」

「そうだけど……」

どうして、こう突慳貪な受け答えしかできないのだろう。

これだから、人がどんどん離れていくというのに、どうして。

「でもさぁ、これ、ヒントになるかもだぜ。お前の、交換条件の」

盲点だった、完全に忘れてた。

頭の上に岩石が落とされたような感覚だった。
 
「あ、そういえば、何だったの、それ」




「自分の本当の親を見つけてくれ」





あのとき、何も思いつかなかったから、咄嗟に適当を言っただけなのに。

後悔したが、どうせ絶対見つけられないだろうと高をくくっていた。

だが今は状況が違う。

すぐに見つけられるだろうし、下手をすれば……。

いいや、きっと。

「え、なら丁度いいんじゃない」

「だからそう言ってるじゃねぇか」

「……ごめんなさい。それでも、嫌なんです。自分を、細胞レベルに分析されるのが。怖いんです」