「ねーねー、もうすぐ花火大会だね!誰と行く?」

「んー……」

「アンタは彼と行くんでしょ!」 

「な、ななな何言って……!」

7月下旬。

1学期もあと3日ほどで終わり、夏休みという娯楽と誘惑の期間がやってくる。

橘くんと瑠璃さんの告白から約一ヶ月ほど経とうとしていた。

あの後、調査を続行しようとしたが、まずしばらくはお互い恥ずかしくて会えず、その後にそれぞれ定期試験あり会えていないため全く進んでいない。

謝りたいのに、それすらもできず。

高田さんが言っていたような橘くんが私へのイジメを示唆しているとは考えられない。

ずっと気がかりで、喉の奥に小骨が突っかかったように心の深くに残っていたのだ。

まだ、完全とれてはいない。

やっと試験期間が終了し、今日か明日あたりに順位が発表される。

今回の試験はかなり久しぶりで、高田さんが言ったように前回の試験では順位が中学生のときよりも落ちていたため、心配だ。

「おい、順位張り出さされたぞー!」

どこかの男子生徒の一声で、教室中が湧き、机や椅子にぶつかりながら慌ただしく出ていった。

私は教室に橘くんと二人でポツンと残った。

人混みが苦手なのと、どうせ背が小さくて見えないのだから人が引いていった頃に見に行こうと思ったからだ。

暫く宿題をしていたが、このまま話し掛けないのもどうかと思い、思い切って口を開いてみた。

「……見に行かなくていいの」 

「ああ。テストは舐められない為に点数取ってんだよ」

「そう」

編入生だからか、と合点がいく。

まあ確かに急に1位に編入生が入ってきたら恐れられるわね、と心の中で苦笑いした。

「お前はいいのか?前結構落ちてたみたいだし」

そりゃあ、中学校のときと比べると変わるでしょ、という言葉は言わないでおいた。

「……って何で橘くんが私の中学のときの成績知ってるのよ」

「噂で」

……如月さんって、捨て子らしいよ。

……それならあの性格も頷けるね。

わざと聞こえるように言っていた記憶の中の悪口が脳内に木霊し、眉を潜めた。

「……噂って怖いわね」

「そうだな。俺はBlackPrince、お前はWhiteQueenって呼ばれてることも知ってるぜ」

「な、……!」

WhiteQueen。

白女王。

心情を包み隠さない、思ったことをすぐに言う、などという皮肉を込めてWhite。

冷たい、また、この口調から高圧的だととられ、Queen。

裏で私が呼ばれているらしいという仇名だ。

直接言われたことはないので、真偽は定かではなかったが、まさか事実だったとは。