……これら、全部あの金髪の人が持って行ったものだ。
どうして、橘くんが?
目をゴシゴシ、と擦るが現実に変化は表れなかった。
よく記憶を磨けば、紙袋も同じものなような映像が浮かび上がる。
どこか、それを裏付けるもの、いや、否定する材料は無いものか。
このままだと面倒臭いことになる予感しかしないため、事実をはっきりさせて、なるべく話したくも、会いたくもないから、郵送で送り返したい。
一冊、教科書を取り出した、と同時に。
ガラリ
……え。
「天藍姉ー」
「はるくんノックノック!」
「おい離せ、遥斗っ」
……何この状況。
ぽかーん、と無防備に開いた口が塞がらない。
遥斗がノックもせずに私の病室に突撃、それを千稲ちゃんが戒め、手を引いているはるくんに抗う橘くん。
……千稲ちゃんと遥斗までは、想定内だと言えよう。
どうして、橘くんが?
帰ったんじゃなかったの?
そもそも、何で遥斗や千稲ちゃんと一緒にいるの?
指先から血液が冷え固まり、粘つく汗に服が吸い付いた。
僅かに呼吸が荒くなったのを、自分の鼓膜が一番最初に認識した。
「ご、ごめんね天藍ちゃん、ノックもせずに……」
千稲ちゃんの黒目が右往左往する。
今日の千稲ちゃんは少し気合の入った編み込みだ。
ここまで綺麗な編み込みを自分でできるなんて、所謂女子力というやつか。
私は欠片も持っていない。
「別にいーじゃねぇかよー。天藍姉怒らないしさ」
ニヤッ、と小学生3年生にしては大人な笑みを私に向けた。
……。
別に私はそのくらいのことで怒りませんけどね。
怒りませんけどね……!
「もう、はるくん」
不満そうな表情をしているが、やはり恋人、すぐにその表情がふにゃっと崩れる。



