玄関に向かう途中にある洗面所を通り過ぎてから言うことがあったとまた戻って、洗面所に顔を出した。
「テツ!あたしこれで行ってくるから!
テツのお弁当キッチンに置いてあるから忘れずに持っていってよ!」
「…ん~」
顔を拭いていたテツは手を挙げて返事をした。
それを見届けて再度玄関まで小走りで向かう。
玄関に座ってパンプスを履いて、鏡の前で服装の最終チェック。
ワイシャツのシワを伸ばしたりしてるとテツが玄関までお見送りに来てくれた。
「じゃあ、いってき……」
「澪……ん、」
「え、それは何…?」
いってきますと言って家を出ようとしたらテツが腰を屈めて顔を近づけてきた。
それはキリンがいきなり首を下ろしてきたみたいだった。
「あ?何って行ってきますのチューだろ?」
「そこ普通はいってらっしゃいのキスでしょ!…ってそこが問題じゃなくて!
やらないわ!やるわけないでしょ!?」
漫画とかドラマだと仕事に行く男性に女性がいってらっしゃいってキスをするけど、行ってきますのキスってなんかおかしくない!?
…あ、でもキスして行ってきますって言う人もいるからおかしくはないか。



