「ねぇねぇ、テニス部の見学しに行かない?」



事の発端は、小学校からの幼なじみ、加賀美愛華 Kagami Aika の言葉だった。



「テニス部?」



いつものように授業が終わり、帰る支度をしている愛華を横で待っていた。


普段なら、2人で真っ直ぐ駅まで歩き、同じ最寄り駅で降りて、私の家の前で別れる。


今日もそうなるはずだと思っていた。



「そうそう!ずっと気になってたんだけど、1人で見学する勇気がなくて……」


「なるほど……」


「雪花、お願いっ!このとおーりっ!」



あまりに必死にお願いしてくる愛華を見て、断る理由も特にないなと思い、「わかったよ」と承諾した。


この春から高校生になった私、如月雪花 Kisaragi Yuna は、部活動に入る気はなかった。


でも愛華、すっごく行きたそうだったし……付き合うか。


そんな軽い気持ちでいた。