溺愛というには程遠い

始業式も終わり、いよいよ学生らしく勉強をするのだと思っていた。しかし、各教科の説明や担当教員の自己紹介などで大概の時間を奪われ、3日ほどはつまらなかった。

いざ授業が始まると、とんでもない早さで進んでいく範囲と出される課題の多さに驚く。簡単な単元だと1日で終わってしまう。それは、このクラスが予習復習当たり前かつ一回聞いただけで全てを理解してしまうからだ。
私は天才ではないのでなんとかついていっている感じだ。他の席の子の中には眠っている子なんかもいる。

「はいじゃあ明日テストをします。ランキングにも関係するからしっかりな!」

学園では小テストだってランキングの評価対象だ。なのでけして気を緩めることはできない。さっきの時間で終わりだからさっさと帰って勉強しようと思ったとき、横から声をかけられた。

「えーと、砂塚さん!」
「なんでしょう。」
「あのさ、今日のノート取らせてくれない?つい寝ちゃって。」
「あぁ、さっき寝てた人。10分で終わらせてね。」

別に人に親切にしない訳ではない。このクラスメイトは将来有望な人達ばかりだから、顔をつないでおいて損はない。

「ありがとう!じゃあちょっとまって!」

いかにもJKという格好で、髪も染めているのか地毛なのか、きれいなブロンド。ハーフらしい顔立ちだったけど留学生枠かとも思った。ならば、英語を学ぶには丁度いいかもしれない。

「砂塚さん!ありがとう!いやぁ、まさか英語で寝てしまうなんて…。」
「英語得意なの?」
「うん!私中2の終わりまでアメリカでいたの!それに、ママはアメリカ人パパは日本人のハーフなんだよ!」

ドンピシャだ。こういう繋がりはしっかり利用させてもらおう。

「なら、スピーキングの練習付き合ってもらえると嬉しい。私、海外の大学行きたくて。」
「OK!そういう事なら協力する!後私、砂塚さんの隣のアイリス・瑞沢・ノートルディー!アイリスって呼んでね!じゃあまた明日!」

そういうと鞄を持って颯爽と帰っていくアイリスさん。私は彼女があまりに元気だから、少し苦手になった。