「あれ?ここ、虫に刺されたのか?」

理乃の首元にある薄っすら赤い跡。

「え?」

俯いたままだった理乃が顔を上げた。

「ここんとこ」

指先で軽くその跡に触れた。



途端。

脱兎の如く、理乃が首元を押さえて俺から離れた。


「…理乃?」

「あ、っと、ナンデモナイ」


……。

なんでもないわけないだろ。

真っ赤になって首元押さえて…。

挙動不審すぎ。

ってか、誰だ?

…優弥しかいねぇよな…。



かなり苛つくけど、ため息を一つ吐いてから冷静になって声をかける。

「理乃、ちょっと来い」

「ぶ、部活遅」
「ちょっとだけだって言ったろ」

「でも…」

結局イラついた俺は理乃の手を握って上履きのまま横の中庭を突っ切って校舎横の、人がほとんど通らない場所に来た。