「……いたら悪いかよ」
そっぽ向いて呟いた河野。
「やっぱりー?って…、ええっ!?いるのっ!?」
てっきりいないと言われるかと思ったから吃驚した。
「うるせぇなっ!いるって言っただろ!」
「…本当に?」
「こんな嘘つくと思うか?」
口調は荒いけど河野は前を向いたまま真面目に答えてくれた。
そんな河野の横顔を見てつい足が止まる。
立ち止まって傘を持っていない私の身体はすぐさま強めに降り続く雨に濡れた。
そっか
好きな子がいるのか
だったら余計に迷惑だよね…
そんな私に気付いた河野が振り返って数歩戻って来て傘を差し伸べてくれた。
ただそれだけなのに。
自分が凄く悪い事をしてる気分になった。

