「河野ー、傘に入れてー」
声をかけながら傘を持つ河野の元まで走って行くと、私の声に気付いた他の部員が河野に話しかけてくれた。
河野が振り返って私に気付いた時には、河野の傘を持つ腕にしがみついていた。
「良かった。傘に入れてよ」
「…いや、もう勝手に入ってるだろ」
呆れながら言う河野の横でムードメーカー兼副部長の小松が嘆いた。
「うっわ…。白井に健二を取られた」
「小松ー、空気読んでやれよ。ほら、帰るぞー」
「お邪魔虫は俺らと帰ろうな」
他の男子に促された小松は河野を諦めて渋々と帰って行った。
…小松は河野と帰るつもりだったのかな?
「…ほら、帰るぞ」
「あ、うん」

