帰りに聞けばいいか。

香菜に急かされて着替えを済ませた面々は、帰ろうとした時にはすでに話題を変えていた。

「誰か置き傘ないー?予備貸してー」
「一緒に入っていく?」
「私持ってきてないよー」


あ。傘…。

外は梅雨の雨空。
今朝の天気予報では降水確率が50%と微妙なとこだった。
朝は降ってなかったのもあるが、単純に遅刻しそうになって慌てて家を出たせいで傘を忘れた。

「私も忘れたー。香菜ー、途中まで傘に入れてー」

そう言うと香菜は呆れたように言った。

「私の傘に入るより河野と帰ったほうが濡れなくて済むでしょ?」

あ。なるほど。

部員のほとんどが電車通学の為、駅まで徒歩だ。
でも私は地元だから、校門前の狭い歩道までしか皆んなと帰れない。

私と同じ方角に帰る部員は女子にはいないのだ。
男子部なら河野が同じ方角だから確かに濡れないで済む。