いつもとは違い、悪役令嬢のような口調のリリアに呆れながらリオンは無理やり歩かされる。リリアはとても楽しそうだ。

王女の着る豪華なドレスから高級でもまだシンプルなワンピースに着替えてきたリリアは、リオンの手を掴んで王宮の外へ連れ出したのだ。さすがにこれはまずいとリオンは思ったのだが、もう街中を堂々と二人は歩いている。

「いいじゃない。庶民の生活を知るのも王の役目でしょ?」

リリアはそう言い、リオンに笑いかける。リオンは「ちょっとだけだよ」と言いリリアと強く手をつないだ。二人がいなくなったとバレたら王宮は大騒ぎになる。リリアに早く満足してもらおう、そうリオンは決めて歩いた。

「それで?お嬢様はどうしたいんですか?」

リオンが訊ねると、「ブリオッシュを持って参れ!」とリリアは笑いながら偉そうに言う。ブリオッシュなんてお茶の時間に出てくるだろうとリオンは思ったものの、「仰せのままに」と言い、リリアとカフェに入った。