「……お前には関係ないだろ」
「はぐらかしたい時の都合の良い言葉第一位ですよそれ。
アナタが僕のライバルなんて…びっくりです。心底がっかりしました」
本当にがっかりしたようにため息をついて、蓮くんが私に向き直る。
「というわけで、男として俺の方が絶対優れてます。
俺と付き合いましょ、水萌先輩」
「いやあのね蓮く…ん!?」
「俺本気ですから、先輩のこと」
トンッ、と私の腕をつかんで軽く引き寄せた蓮くんが、そっと耳元に口を寄せて言った。
吐息が耳にかかって、カッと顔が熱くなる。
「くすぐったぁ!!」
「はは、色気ないですね~水萌先輩。でもそこも好きです。というわけで一緒に帰りましょうか」
「どこがというわけで!?」
「じゃあそういうことで朝比奈先輩、またどこかで」
「ちょっと蓮くん!?」
蓮くんに腕をつかまれて強引に連行される。
2年生のみんなが1年に引っ張られる私を何事かと好奇の視線で見ていた。
「れっ蓮くん、手はなして…!」
「嫌です」
「先輩命令です!!」
「言っとくけど俺、水萌先輩のこと先輩としてなんて見てないですから」
歩みを止めないまま私を振り向いた蓮くんが、品良く笑う。
「女としてしか、見てないんで」