「朝比奈くん下の、名前っ…」




じわ、目の前が涙でにじむ。



どうしよう。




胸がいっぱいで。



朝比奈くんでいっぱいで。




知らなかった。



彼の口に紡がれれば、自分の名前がこんなに甘い響きを持つってこと。



名前を呼ばれるだけで、こんなにも胸がいっぱいになるってこと。




深く唇をあわせて、朝比奈くんの親指が、私の目元をひどく優しい手つきで撫でたとき




「ほんとに、だいすき……」




熱かった体からスッと力が抜けて。




「…え?おい…嘘だろ…?」





焦ったような朝比奈くんの声を遠くに聞きながら




微睡むように、意識が途切れた。