「あ、さひな、くん…?」




ゆらり、朝比奈くんの影が揺れたような気がした。



黒い。なんか朝比奈くんから、黒いオーラが…




「も、もしかして…」





怒ってる?





「なんか言った?」





朝比奈くんの右の口角が不自然に、少しだけあがる。




「え、えと、お、怒って…ますか?」


「全然」


「そ、そっか!なら良か」


「ムカついてるだけ」




朝比奈くんの手が伸びてきた、と思ったら、




ぐらん、と視界が反転して、体が宙に浮く。




こ、これって…




「お姫様だっこ!?むむむ無理重いよ!?」



「宮原の部屋どこ」




朝比奈くんが荒っぽく遮った。




「案内してくれる?」