「……あーあ」



決意の握り拳を作る私の前で、蓮くんがため息をつく。



「俺はじめてなんですけど。まさかこんなになびかないなんて」


「え?」


「弱みにつけこもうと思ってたのに…弱ってたんじゃなかったんですか?」


「弱ってたよ!復活したけど!」


「復活したんですか…」




はぁ…さっきよりも深いため息をつく蓮くん。





「…水萌先輩って顔面はすごい可愛いと思うんですけど」



「えっ?」



「中身はかなり残念ですよねー、なんていうか」



「ありが…え、残念?」



「…まーそこが、あの人はいいのかもしれないけど」





蓮くんの手が後頭部にまわされて、グイッと引き寄せられた。



コツン、と額と額が当たる。




「えっ、ちょ、蓮くん!?」



「今日デートに付き合ってくれたお礼です」



「え…」



「お幸せに」





蓮くんの瞳がすっと細くなって、あー、蓮くんてこんな笑い方もできるんだ、って思った、その時




ものすごく強い力で、ギュッと後ろから抱きしめられた。




「ごめん。これ俺のだから」