―――『触んな』
そのときのあいつの顔、たぶん一生忘れない。
あー、いつもバカみたいにニコニコ笑ってる宮原も、こんな顔すんだなって思った。
そしてあんな顔させたのは――俺だ。
「那月くーん?なんか暗くない?もしかして具合悪いとか?」
「あー…そうですね。…具合悪いかも」
せっかくの土曜日に大嫌いな女とデートなんて何考えてんだよ俺。
“朝比奈くん…ラブレターの返事聞かせてくれる…?”
あいつに以下省略に値する意味不明なラブレターもらって、あいつにはじめて会ったあの日から。
…たぶん俺はずっと調子が悪い。
気にしなくていいようなことを気にしたり。
どーでもいいことにイラついたり。
思ってもないことを…言ったり。
うまく自分のペースが保てないんだ。