「もうこの世にルカはいない……」

私はポツリと呟き、葬儀のことを思い出す。ルカも私やジュリアーノと同じ貴族だ。しかし、参列者は一握りほどしかいなかった。仕方ない、彼は生前から人々から馬鹿にされ続けたのだから……。

葬儀の最中、貴族が入るにしては質素な棺に入れられたルカの最期の顔を見た。彼の歩んだ二十年は貴族とは思えないほど悲惨なものだった。それなのに、どうしてあんなに穏やかな顔をして死ねたんだろう。もしかして、やっと苦しみから解放されたから?

そんなことを考えていたら、葬儀に参加したことへの疲れなんて消えてしまった。今私の胸に広がっているのは眠りたいという気持ちじゃなくて、絵を描きたいという思い。

お風呂から出ると、用意されていたネグリジェではなくオレンジの胸元が大きく開いたドレスを着る。そして寝室ではなく私の着るドレスなどが置かれているドレッサールームへと向かう。

「あった、鍵……」

メイク道具が入っている引き出しの奥に手を入れると、地下室の鍵が手に当たる。私はそれをしっかりと手にし、地下室へと向かった。