「私、大学辞めることになりました」
水樹さんの表情が固まった。真剣な話になる。彼の手を引いて、ベッドに座った。
「カネ?」
腕を組んだ彼はすぐにそう聞いてくる。
「はい。考え尽くしたのですが、学費と生活費をどうやっても捻出できなくて」
頭を沈ませながら白状し、私は恥ずかしくなった。水樹さんはお母さんから一円ももらわなくとも、大学に通い、なんとか生活しているのだ。それに比べて私はどうだろう。頼っていた母を失ったとたんに、辞める選択しかできなくなるなんて。
「授業料は半期で二十五万。残り二年半で、百二十五万か……」
水樹さんはボソボソとつぶやき、兄と同じ計算を始めた。いくら計算しても、私はもうすぐ締め切りの後期の授業料すら用意できそうにない。
「……み、水樹さんはここにいますよね。私、大学は辞めますけど、あと半年ここにいようと思うので」
彼のそばにいるための生活。本当はそれがずっと続いて欲しい。ねえ水樹さん、その先も、私のそばにいてくれる?



