ハッピーエンダー






次に水樹さんと会えたのは、葬儀と火葬が終わり、兄と今後について話し合った後、東京へ戻った日のことだった。

彼は私の家で待っていた。通夜の日にキスしてくれたときと変わらない、優しい声で「おかえり」と言い、玄関で私を抱きしめる。腕の中で、私は目を閉じていた。私は、大学を辞める。

兄に心配をかけないよう、きちんとした就職先を探さなくてはならない。大学に近いこの土地でいつまでも洋食屋のアルバイトをしているわけにはいかないし、就職して、引っ越して、新たな生活を始めなければ。水樹さんはどうなる? 彼の居場所を奪ってしまう。それとも、彼の卒業までは、現状維持のままがいいんだろうか。

「……水樹さん」

私を包む腕に触れて、そっと体を離してもらった。悩み疲れた私の目のクマを見て、彼は「大丈夫?」とそこに触れる。ああ、離れたくないな。彼のためだけにでも、ここにいたい。もうこんなに好きになってしまったんだもの。