彼は答えず、遺影に目をやった。
「母ちゃん、光莉に似てるね」
そう。私はお母さん似だった。水樹さんからしたらお母さんが私に似ていたかもしれないけど、逆だよ。そう思い、涙をでグチャグチャの顔でヘラッと笑ってみせる。
「水樹さん、来てくれたんですね……」
「光莉のバイト先に聞きに行った。店長のおっちゃん心配してたよ」
そう、か。いつも迎えに来てくれたときは中には入らなかったのに、わざわざ店長に聞いてくれたんだ。……どうして? どうして水樹さん、そこまでしてくれたの?
兄の友人は帰り、兄は私たちを見た。水樹さんに会釈をしながら「光莉の……彼氏?」と私に尋ねる。私は首を振った。
「ち、違う。大学の先輩」
水樹さんもうなずいた。そう、私たちはただの先輩後輩。兄は彼に「光莉が世話になってます」と挨拶をして私たちを交互に見た後、なにを思ったのか「せっかく来てもらったんだから、少し話していけよ」と私に言い残し、忙しいふりをして会場を去っていった。
勘違いをして、気を遣われた。出入口には誰もいなくなり、私と水樹さんだけが残される。



