すべて終わりまた会場の出口に立ち、帰っていく人たちにお辞儀を繰り返し次々と見送った。
母の知り合いが「元気を出してね」と心配する言葉をかけてくれるが、私は「はい」とうなずきながら、正直、今は水樹さんのことが気になってしかたがない。どうして来てくれたの。なにを思ってそこにいるの。聞きたいことが山ほどある。彼はしばらく目を閉じて座っていて、最後に席を立ち、最後尾に並んだ。
もうすぐ。もうすぐ彼の番がくる。
やっと彼の前に並んでいた兄の友人にお辞儀をした。その人は兄と話し込んでいる。私はその隣で、次に立っていた水樹さんを見た。
「……み……み、水樹、さん」
しっかりと着られた喪服。こんな格好の彼を初めて見た。まるで別人のようだと感じたが、サラッと茶髪を揺らして「光莉」とささやいてくれた彼は、いつもそばにいてくれる水樹さんに違いなかった。抱きつきたい衝動を涙と一緒に流し、「どうして」とうわ言のようにつぶやく。



