私は尊敬する兄に、初めて軽蔑の目を向けた。
「いや、だから……知識がありゃ備えられるもんだったのにって話だよ」
「それでもお母さんのことそんなふうに言う!? お兄ちゃんはちゃんと四年間通わせてもらっておいて!」
「別に感謝してねぇわけじゃねぇよ! 俺だって必死で考えてんだ! いちいち突っかかってくんなよ!」
これまでのストレスを爆発させた兄に、私も強気の視線を向ける。話しても話しても平行線。いつまでも答えは出なかった。
兄に逆らい、大学へ行かず、下宿先の更新手続きもしなかった。さらに安いワンルームに移ると決め、残された時間で就職先を探す日々。
下宿アパートの退去日に追われていたとき、兄に、大学を辞めてもいいから、兄名義で借りた2LDKで一緒に暮らそう、と懇願された。私は心底ホッとして、泣きながら、「ありがとう」と兄にすがりついた。



