話を聞く限り、彼のお母さんはいろいろな精神病を患っているようだけど、一番身を滅ぼしているのはアルコール中毒らしい。年々、正気を保っている時間が短くなり、ひどいときは何日もお風呂も着替えも食事もせず、ひたすら飲んで眠るのだとか。
「光莉と飲むのは平和でいい。楽しいよ」
「本当ですか?」
彼は目を閉じてしみじみとつぶやいた。うれしい。私も水樹さんといると、とても楽しい。私たちは彼のお母さんのことを無視している。それで得られる平和をわかち合い、罪の意識も共有していた。だからもうお互い、離れられない。
相変わらず、水樹さんは今でも私に変な触れ方はしない。抱き合うし、手も繋ぐし、じゃれあったりするのに、キスやセックスをする雰囲気には絶対ならない。常に一線を引かれている。
それでもいいと納得しているし、関係を壊したくないとも思う。でも、私はたぶん、彼に求められたら応えるだろう。それは秘密にしている。



