私はうまく理解できなかった。

「えっと……?」

「金はなにも入らないってこと」

兄は保険証券の裏にボールペンでスラスラと計算式を書いていく。

「いいか。光莉の学費は半期で二十五万、残り二年半だから百二十五万。家賃、光熱費……もろもろ計算して、卒業までに最低三百万かかる」

まとまりのない数字たちを一本線で締められ、その下に三百万という数字がアンサーとして示される。

「昼間、光莉の大学に電話をかけた。共済の保険にも入ってなかったから学費の免除は受けられない。なんとか三百万用意するしかない」

「三百万……」

二年半で三百万。アルバイトの私には途方もない額だった。