「受付いねぇのか」と不満をつぶらいた彼はゆらりとベッドを降り、リビングの前の廊下に取り付けてあったインターフォンのモニターを見に行く。ベッドに取り残された私も、体を起こした。
「……婚約者の女だ」
「え!?」
壁に手をついてカメラを見ながら、水樹さんはそう言った。私も控えめに近づいて一緒に覗く。私とはまるで育ちが違うとわかる体にフィットしたワンピースの女性が、不安げな顔でカメラの向こうに立っていた。
「ど、どうしましょう。やっぱり来たじゃないですかっ」
急いで玄関に靴を取りに走り、それを持ってまたモニターの前へ戻る。水樹さんは私の素早い動きに眉を寄せた後、壁にもたれてフッと笑った。
「大丈夫。入れねえよ」
彼は応答ボタンを押すつもりはないらしい。



