「電話、いいんですか」
「いい。邪魔されたくない」
彼は私を仰向けにさせ、指を絡めてきた。おかしいな、五年前はここまで大胆なスキンシップはされなかったのに。
「……水樹さん?」
ゴロゴロと猫のような甘え方だったはずが、彼の目は急に真剣なものとなった。私に覆い被さって、両手の自由を奪いながら見下ろしている。頭を落とし、徐々に近づいてくる。
「光莉……」
キスをねだるかのような甘い声。そんなことされたら思い出してしまう。私は今でも、あの日、あなたがしてくれたたった一度のキスが忘れられない。ああ、水樹さん──。
目を閉じた。すると唇が触れる前に、〝ピンポン〟という大きな機械音が響きわたる。
私たちは目を開けて、黙って見つめ合った。彼は十秒そのまま無視をして、もう一度〝ピンポン〟と鳴ったのを聞いてから不機嫌に体を起こす。



