「切れた。……九時前か」

ボソボソとつぶやく彼を、私はさらに揺する。

「切れたんじゃないですよ。今、水樹さんが自分で切っちゃったんですよ」

誰からかはわからない。おそらく水樹さんもわからないだろう。彼は昔から、番号に名前を登録しない。自分からかけることはないからだそうだ。登録したのは、私の名前だけ。

「光莉……おはよ」

水樹さんは私の体を後ろから抱きしめ、髪に鼻を押しあてている。恥ずかしくてジタバタと暴れたが、彼の力は強くて抜け出せるはずはなく、あきらめて大人しくしていると水樹さんの息でゾクゾクと背中が甘く疼いた。

「み、水樹さん……」

水樹さんはなんとも思っていないかもしれないけど、私は布団の中で抱き合ってなにも感じずにいられるほど無神経ではない。久しぶりの感覚に顔が熱くなる。