「父親のほうは、何人目か知らねえが本妻に子ども産まずに出て行かれて、年齢的に子どもはもう難しいわけ。んで、俺が呼ばれた」
ハハハ、と渇いた笑いを交え、彼は私の髪に触れる。
「あの人プライドの塊だから、跡継ぎは血が繋がってなきゃ我慢ならないんだと。捨てた俺を今さら認知させろって。気が違ってる」
「……ビックリです。で、でも水樹さんが優秀だから白羽の矢が立ったんでしょうね」
「ありがとう。そんなことはどうでもいいんだわ。本題なんだけど、俺たちまた一緒に暮らさない?」
ドキン、と胸が高鳴る。
ソファの背もたれに頬杖をついて私の頬に触れる水樹さんは、呆然とする私を見つめ続ける。行儀悪く脚をソファの上に持ち上げ、私を逃がさないためか、囲うように立て膝をついていた。



