「おい光莉、今夜はすげぇやつ連れてきたぞ。驚くなよ?」
「えっ!? やだ、お客さん連れてきてるの!? ひとこと言ってよ!」
私は慌てて体を起こして髪を直し、キョロキョロとあたりを見回す。すると床に立て膝をついて座り、ソファに頬杖をついて私を覗きこんでいるスーツ姿の男性がいた。
「……え」
「よぉ。久しぶり」
聞き覚えのある気だるげで色っぽい声。心臓が止まりそうだった。
檜山水樹。
あの頃のトレードマークだった明るい茶髪はグレーに落ち着き、結べるくらいだった長さは少し短くなっている。ピアスがたくさんついていた耳には穴だけが残り、黒いTシャツばかり着ていた水樹さんは今はストライプのスーツを着こなしていた。
「え……なんで、水樹さんが」
なにを考えているかわからない、目の奥は笑っていない、あの澄んだ笑顔をこちらへ向けている。



