「仕事は、辞められそう?」
キスの音を立てて尋ねられ、私はのぼせながら、ゆっくりとうなずく。
「はい……。明日からはもう、有休になります」
「そう。よかった」
かぷ、と唇に蓋をされ、粘膜に舌が入ってきた。心地よい。安心するし、ドキドキする。しかしなぜか回数を重ねると、通夜でのあの身を焦がすようなキスからはどんどん遠ざかっていく気がした。
しばらくして、私はうっすらと目を開くと、キスをしている彼がしっかりと目を開けていることに気づいた。それがまるで睨んでいるように見えたから、思わず舌の動きを止める。すると彼もキスをやめ、顔を離した。
「み、水樹さん?」
「タバコの匂いがする」
ギクリとして、思わず距離をとった。
「あ、それは……」
「女のじゃない。年増の男が吸うやつ」
最悪。郷田さんだ。水樹さんに郷田さんの存在が知られるのは嫌すぎる。水樹さんもきっと、そういう事実を疑っているのだろう、目つきが怖い。



