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【ごめん光莉、夕飯食ってて。飲んでくる】
夕方に兄からメッセージが来た。華金だからしかたないけど、またベロベロになって帰ってくるのは勘弁してほしい。
今は二十三時。私は少し、明日のために物件を調べよう。
契約社員といってもフルタイムのため自由に動ける時間は土日しかなく、先週は保険資格の更新に使ってしまったから明日こそ不動産屋へ行かなければ。
ソファに横になり、仰向けでスマホをスクロールする。天井の電気がぼんやりと揺れる。パーカーのフードで枕を作り、軽く目を閉じた。やっぱり明日にしようかな。なんだかもう、眠いし──。
「──ぃ、おい、起きろ光莉! 兄ちゃん帰ったぞ!」
「ん……なに、お兄ちゃん? やだ、お酒くさい!」
「アハハハ!」
視界ではソファの背もたれの向こうから兄が身を乗りだし、眠る私の二の腕をグワングワンと揺さぶっている。んもう、いつもこうなんだから。



