「あ、ケーキ買ってきたのか?」
水樹さんは大きな体に反動をつけて起き上がり、紙のケースを持つ私を片手で「おいで」と引き寄せる。導かれるまま、隣に座った。
「はい。水樹さんのは、チョコレートクラシック」
ケーキを箱から出すとき、頬が緩んだ。美味しそうなケーキを前にしているからか、水樹さんとケーキ、綺麗なものに囲まれているからか。帰ってからシャワーを浴びたらしく、水樹さんからはシャンプーのいい香りがする。
お茶を入れてきます、と席を立とうとすると、彼にするりと捕まった。
「待って」
「きゃっ……」
転びそうになったが、ソファに座ったままの彼の膝の上に乗せられ、対面にして抱きしめられる。
「水樹さんっ、……んん」
頭を固定され、優しくキスをされた。



