香苗が帰って一息つくと、ガチャっとドアが開く音がした。


寝室から優愛ちゃんが来た。


「少しは眠れた?」


チラッと時計を見ると、優愛ちゃんの手当てが終わってから1時間弱しか経っていなかった。


そのせいか、優愛ちゃんの目元にはクマが出来ていた。


「………まぁ、はい。」


曖昧な返事をする優愛ちゃんに、“寝れなかったんだな………。”と思った。


「優愛ちゃん、座って。」


俺の隣を手でポンポン叩いて、優愛ちゃんに座る様に促すと、素直に座ってくれた。


「優愛ちゃんのお母さんの事だけど………。」


そう切り出すと、優愛ちゃんの肩がビクッと僅かに跳ね上がった。


「警察と児童相談所に通報した方が良いと思うんだ。」


俯いていた顔をゆっくりと上げて俺を見る優愛ちゃん。


「………行きます、警察。」


意を決した様に言う優愛ちゃんの頭を優しく撫でた。


「うん。大丈夫。俺も一緒に行くから。」


「はい………。」


大丈夫、優愛ちゃんの事は俺が守るから………。


《前川翔琉 SIDE END》