敏也は迷った。早退したから、正充がゲームソフトを持ち返ったかもしれないのだ。その可能性はある。

 教諭に見つかれば叱られる事は免れない。それに他にも罰が与えられるだろう。

 だが、選択した。

 校門は閉められているが、鍵はかかっていない。一人だけ入れるスペースを空けた。

 なぜか不思議と爽快だった。

 普段通りの道順で、下駄箱に向かった。カギはかかっていなかった。靴を脱ぎ靴下のまま忍び込んだ。

 廊下の冷たい感触が、靴下を穿いていても感じ、緊張感が増した。

 教室まで問題なく行けた。真っ暗で見えないかと思ったが、非常灯の明かりで難なく行けた。やはり、毎日来ているだけはある。

 薄明かりで、教室の扉を見ると、いつもと違う気がする。

 敏也は扉を開けた。

 軽く開けたつもりだが、森閑(しんかん)としているせいもあって、軋んだ音が響いた。

 異音で教諭に知られたら、すっ飛んで来るのだろう。女性教諭なら、怖くて来ないかもしくは用心してゆっくり来るかもしれない。中川教諭なら一目散に来るだろう。捕まれば、ネチネチと説教が始まるだろう。考えただけでもぞっとする。

 敏也は教室の電灯をつけた。