窓の外は真っ暗だった。

 それもそのはずで、午後八時を過ぎているからだ。

 敏也は急に昼間のことを思い出した。正充から借りた物の事である。それは人気ゲームソフトで、ようやく貸してくれたのだ。学校にゲームソフトなどを持ってくることは禁止であった。もし、見つかれば没収され、反省文を書かされる。以前、数回、見つかった男子生徒は髪の毛を丸坊主にし、毎朝トイレ掃除もさせられたのだった。

 机の上には、鞄があった。

「あっ!」

 早退する際に紙袋を机の中に入れっぱなしだ。持ち帰っていないのだ。

 明日に返す事になっているので、このままではゲームを一度もプレイしないのは不本意だ。正充はケチなので、貸し出しの延長は拒否するだろう。

 敏也はゲームの事しか考えられなくなった。

 やりたい! やりたい! やりたい!

 欲求に支配され、このままでは頭が変になりそうだ。

 学校に行こう。欲求を満たすにはゲームソフトを持ち帰るしかないのだ。

 誰にも気づかれないように家を出た。


 門の前で立ち止まった。職員室から蛍光灯の光が漏れている。教諭はまだ校内にいる。